2019.07.30 更新
五十肩
五十肩についてお話しします。
五十肩は、一般的に50歳代を中心とした中年以降に肩関節周囲組織の退行性変化を基盤として明らかな原因なしに発症し、肩関節の痛みと運動障害を認める疾患 と定義されています。
肩の痛みを訴えて来られる患者さんは当院でも多いですが、痛みの度合いや症状も様々です。
原因ははっきりとしませんが、首肩のコリがきつい方や仕事でよく腕を使う方、また過去にスポーツや事故で肩を痛めたことがある方が五十肩になる率が高くなるようです。
五十肩の病期
一般に次の3段階の病期を経て治癒に至ります。
・急性期…運動時痛に加え、夜間痛や自発痛があり、熱感、腫脹もみられることがあります。
痛みで肩が動かせないので、関節拘縮も始まってきます。2~3週間続くと言われています。
・慢性期…夜間痛や自発痛はなくなりますが、運動制限が残っている状態が半年ほど続きます。
・回復期…徐々に運動時痛もなくなり、可動域も回復してくる時期です。
ただし、慢性期から回復期にかけて肩の運動法を的確にしていないと可動域が制限されたままになってしまいます。
個人差はありますが、発症から治癒まで1年くらいかかることが多いようです。
また、この病期の段階を経ずにある一定の動作の時だけ痛みを訴えられる方も少なくありません。
当院での取り組み
まず最初に現病歴を詳しく聞いて、どの状態で痛みが出るか、患部の熱感、腫脹、周囲の筋の萎縮の有無を確認します。
とくに側方挙上、後方挙上、後頭部を触れるか、腰に手を回せるかなどの動きも確認します。
これらの動作は施術後の効果の指標にもなります。
急性期の場合は、まず、痛みのためにこわばった患部以外の頸肩腕の筋肉を気持ちよくほぐしてから、患部の痛みを緩和するために鍼灸施術を施します。また、すこしでも快適な睡眠が得られるための工夫や関節拘縮の進行を予防するためにできることをお話しながら、痛みが治まるまでは週2回の施術を勧めています。
慢性期から回復期の場合には、積極的に肩関節の運動法を取り入れながら可動域の回復を目的に施術します。施術回数も週1回から2週間に1回と徐々にあけていき、ご自宅でも手軽にできる運動をアドバイスしています。
五十肩は、必ず痛みは消失していく疾患なので、辛い痛みに悩んでいる方もあきらめないで根気よく治療を続けてくださいね。
睡眠に支障を来すほどの痛みがある場合は、石灰沈着性腱板炎などの可能性もあるので、まずは整形外科でX線画像の検査をおすすめしています。
最後に腱板断裂について少しお話します。
肩の関節は、腕を大きく動かすために上腕骨を入れる関節のくぼみが浅く、それを補強をするためにいくつかの腱が集束して腱板を作っています。腱板は周囲の組織に圧迫されたり、摩擦されたりして変性しやすくなっています。
高齢者ではこの腱板がすり減ったり自然に損傷することがあります。これを腱板断裂といいます。
腱板の完全断裂では自分で腕を上げることが困難になりますが、部分断裂では他の筋肉の働きで動かせるので五十肩と勘違いされることが多いようです。一度損傷を受けた腱板は特に高齢者では再生されるのが難しいので、無理な運動などで周囲の筋肉や腱に負担がかかってしまいます。
肩の痛みが長期間続く方はやはり整形外科でX線画像、MRIなどの検査を受けてみてください。